五ヶ山ダムは,二級河川那珂川の上流に,福岡県が計画している多目的ダムです。
このダムの目的は,那珂川流域の洪水調節,既得用水の安定供給,福岡都市圏への新規水道水の開発及び異常渇水時の緊急水の補給で,昭和53年の福岡砂漠と呼ばれた大渇水を契機に予備調査に着手し,昭和58年に実施計画調査,昭和63年に建設事業採択をうけて現在に至っています。
この間,地元協議会を始め佐賀県,東脊振村,那珂川町などとの行政間での調整,折衝などさまざまな道のりを経て,調印式を迎えることができました。
去る平成14年12月14日「五ヶ山ダム損失補償基準調印式」が那珂川町役場において両協議会関係者をはじめ,関係行政機関等約50名が出席し開催されました。
調印は,五ヶ山ダム対策協議会の築地幾雄会長と五ヶ山ダム水没対策協議会の杉谷信弘会長の両会長と福岡県の麻生渡知事との間で行われ佐賀県の井本勇知事,東脊振村の福成千敏村長,那珂川町の後藤良助町長が立会いたしました。
挨拶の中で,築地会長は「山に向かって言うことなし。ふるさとの山はありがたきかな」という石川啄木の詩を引用され, 「われわれは,先祖代々そういう環境の中で生活してきた。この先祖伝来の数限りない遺産と24年の精神的苦痛が評価され,ふるさとを湖底に沈ませることを決断した」と述べ,また,杉谷会長は, 「昭和53年の大渇水の時には,自分も福岡市に勤めており水の苦労を十分に理解している。しかし,先人たちが何百年という歳月をかけて築きあげてきた文化と集落をなくしてしまうと言うことは,つらいつらい英断であった」と述べました。
事業に協力していただく地元在住の方々の気持ちを大切にし,今後は,着実な生活再建が図られるよう生活再建対策の実施と相まって,個人の補償交渉を進め,工事着工へ向け事業の進捗を図っていきます。